インビザラインってなに?
ワイヤーやブラケットを歯に固定させる従来の矯正治療とは違い、患者さん自身で着脱をするマウスピース型の矯正装置です。
薄いプラスチック製のためお口の中でも違和感がなく、マウスピースは透明に近いので、至近距離からでも目立ちません。実は、矯正治療が普及している欧米では、インビザラインをしている人は、おしゃれで健康を気づかう人と思われています。インビザラインは、従来の矯正治療の見た目の悪さや日常生活の不自由さといったマイナスイメージを払拭して、おしゃれで健康というポジティブなイメージを周囲の人に与えるほどです。
使用方法
- 1日22時間使用してください。装置を付ける時間が短いと予定していたように歯が動きませんので、治療計画を見直さなければならない場合があります。
- 食事をする時は外してください。(水のみは可能です)
- 経過診察の時にお伝えした通りの期間でマウスピースを交換してください。
- マウスピースは洗浄剤などを使用しないで必ず水洗いをしてください。
マウスピースが出来るまで
自身の口元でどことなく自信のもてないところなどをお聞きします。その上でご希望をうかがい、矯正全般の説明をいたします。インビザラインを希望する方へは、その適正についても説明いたします。
矯正治療に必要な資料採りをさせていただきます。
レントゲン、歯型、口腔内写真を撮って、骨格や歯のどこに問題があるか診断します。
現在の問題点と今後の治療法について説明いたします。治療が始まる前に、「クリンチェック」と呼ばれるシミュレーションソフトをもとに、患者さん自身が治療開始後どのように歯並びが変化していくのかを視覚的に確認していただけます。
アタッチメントの装着
- アタッチメント:
- マウスピースが外れにくくするために歯面に接着する樹脂の突起のこと
マウスピースのお渡し
患者さん自身でマウスピースを10日~2週間に1回のペースで交換していただきます。
3セットから4セットお渡しいたしますので、1ヶ月~2ヵ月に1回のペースで来院していただき、経過を確認いたします。
インビザラインのメリット
装置が目立たずに歯並びを治すことができる
矯正治療を躊躇する大きな心理的原因は矯正装置が見えることです。インビザラインは透明に近いマウスピースを装着するため、比較的目立つことなく治療することが出来ます。(※最も審美的に目立ちにくいのは、舌側に装置をつけるワイヤーリンガル矯正です)
金属ワイヤーを歯面に取り付ける典型的なワイヤー矯正装置は、白い歯の上でとても目立ちます。(図左)
一方、透明に近いマウスピース型の矯正装置は目立ちにくいのが特徴です。(図右)
通院回数が少ない
インビザラインは、マウスピースを10日~2週間に1回、ご自宅で新しいものに交換していたき、治療を進めていきます。矯正開始時はアタッチメントの装着やIPR(*)等が必要なため通院回数が多くなりますが、その後は通常1ヶ月に1回の通院になります。
*IPR:歯と歯の接触面を微小にスライスカットして歯を動かしやすくする処置
処置時間が短い
インビザラインの場合、基本的に装置がフィットしているかどうかをチェックして、問題がなければそれで処置が終了します。ワイヤー矯正の処置時間の約30~40分に比べて、インビザラインは平均15~30分程度と短時間で処置できます。
突発的なトラブルはほとんどない
ワイヤー矯正では凹凸のある矯正装置が口腔の粘膜を傷つけて口内炎ができてしまったり、装置の一部が外れてしまったりと、予想外のトラブルでの来院が必要になることがあります。一方、インビザラインではそのようなトラブルの心配はほとんどありません。
痛みが少ない
矯正治療は、歯に力をかけて少しずつ動かしていくため、どうしても痛みを伴います。ただし、矯正方法により痛み方やその程度は違います。インビザラインの中でも、インビザラインは、ワイヤーを人の手で調整するには不可能な0.2~0.3mmの細かい範囲で、歯を移動させることができます。そのため10日~2週間で新しいマウスピースに交換して小刻みに移動することができ、痛みも小さくすることに成功しました。
食事の時にマウスピースを外すことができる
インビザラインは食事の時にマウスピースを外すことができるため、ワイヤー矯正では食べづらい硬い物、歯につきやすい物も気にしないで食べることができます。マウスピースをしたまま水を飲むことはできますが、糖分の付着や着色の可能性があるため、水以外の物を口にする時には必ずマウスピースを外してください。
歯ブラシやフロスが自由にできる
ワイヤー矯正では歯についたブラケットの周囲など複雑な状態のために、歯磨きに時間がかかりますが、インビザラインでは歯磨きの時には装置を外して普通に歯磨きやフロスも行えます。
メタルフリー
金属アレルギーの心配のある方も樹脂製のインビザライン治療なら安心して施術できます。
スポーツや楽器の演奏も自由に
サッカーや格闘技など体がぶつかるスポーツでも、インビザラインならお口の中を傷つける心配はありません。また、口に楽器を押し当てるような管楽器の演奏も、インビザラインなら装置をしたままで行えます。
セラミックなどが入っていてもそのまま治療できる
ワイヤー矯正では、ブラケットを歯につけるためにセラミックや金属の歯には歯面に前処理をする必要があります。インビザラインの場合は、歯列全体を覆って歯を動かすため、歯面の前処理の必要はありません。ただし、アタッチメントが必要な歯面には同様の処置をさせていただく場合があります。
ホワイトニングも併用できる
インビザラインでは、歯列を整えながらマウスピースをそのまま利用してオフィスホワイトニングやセルフホワイトニングをすることもできます。
※ただし前歯にアタッチメントがついている場合は、矯正専門医の判断にお任せください。
インビザラインのデメリット
装着時間が不足すると歯が動かない
ワイヤー矯正の場合、取り外しは歯科医院で行いますが、インビザラインの場合は、患者さん自身が簡単にマウスピースを取り外すことができますので、つけ忘れることがあります。1日22時間以上マウスピースを装着していないと、計画通りに歯が動かないため矯正治療の失敗につながります。自在に「取り外せること」はインビザラインの大きなメリットですが、自己管理ができないとデメリットにもなります。
また、ワイヤー矯正・インビザラインに関わらず、必要に応じて顎間ゴムという患者さん自身で引っ掛けるゴムの装着をお願いすることがあります。顎間ゴムの装着状況も矯正治療の期間や仕上がりに大きく影響します。
治療できないケースもある
歯並びの乱れが大きく、歯を動かす距離が長かったり、歯根を動かさないとならないケースには、インビザラインは向いていません。インビザラインは、従来の矯正と異なる特有の知識と技術が必要ですが、装置自体はコンピューターを通して海外で制作するため、知識や経験の浅い一般歯科医が適切な判断ができずに、無理な治療計画を立てて失敗する場合もあるようです。
治療計画を立てる歯科医によって、マウスピースの効果や治療結果には大きな差が出てきます。当院では経験豊富な矯正専門医によって、実現可能で最適な治療計画を立て、歯の移動のシミュレーションを行います。患者さんによっては、インビザライン単独での治療が難しい場合もあり、インビザラインに先行してブラケット矯正で治療してから、インビザラインを行うことをおすすめしています。半年から1年程度ブラケット矯正で凸凹を治すだけでも、インビザラインの治療結果が大きく変わってきます。
歯ぎしりが強い方はマウスピースが割れる
マウスピースは薄いプラスチック製で、かみ合う部分まで覆ってしまうため、歯ぎしりなど強い力が加わると割れてしまいます。そのような方は、日中マウスピースを入れている間、かみ締めないように意識してください。日中意識することによって筋肉がその動きを覚え、夜間の歯ぎしりが抑えられるようになります。また、一つのマウスピースの使用期間は1~2週間ですが、もし壊れてしまったら早めに次のマウスピースを使用してください。多少きついかもしれませんが次第に慣れてきます。しかし、マウスピースが何回もすぐに壊れてしまうようであれば、インビザラインに向いていないと考えられるため、対応を検討させていただきます。
追加マウスピースが必要になる場合
当院では、ワイヤー矯正・インビザラインに関わらず最適なかみ合わせを得ることが治療のゴールです。そのため治療経過によっては、治療中盤に患者さん説明の上で、仕上げ治療のためマウスピースのリファイメント(治療の修正・追加)を行います。リファイメントはほとんどの患者さんに必要になりますので、初診時に治療期間の予測をする場合は、リファイメントを行うことを前提に説明させていただきます。新たな治療費は発生しませんが、再度、歯型採りが必要になります。
しゃべりにくさ・聞き取りにくさ
裏側のワイヤー矯正(舌側矯正)ほど喋りにくさはありませんが、マウスピースをはめたまま話をすると、滑舌が悪くなり話し相手が聞き取りにくい場合があります。その場合、普段は少し口を大きく開けてはっきり話すことを意識していただければ、ほとんど支障はありません。
アタッチメントをつける必要がある
インビザラインでは、マウスピースから歯に効率よく力を加えて歯を動かすために、薄さ1mmほどのアタッチメント(樹脂の突起)を歯面につける必要があります。
アタッチメントは、ワイヤー矯正で使うブラケットよりも小さく、ほとんど透明なため目立ちません。治療終了後には外しますので、装着した形跡は残ることはありません。
むし歯になりやすい口腔内環境
歯は唾液によって口の中の細菌や細菌が出す酸から守られています。インビザラインは歯の全体を長時間マウスピースで覆って、歯を移動させます。そのため唾液の流れが悪くなり、歯の石灰化が起こりにくくなります。唾液の流れが悪くなるとむし歯のリスクが高くなります。
また、マウスピースによって歯の表面は酸素に触れることができないために、細菌が繁殖しやすい環境になります。
矯正期間中は特に磨き残しなどがないようにしっかりと歯磨きをしていただく必要があります。
マウスピース装着中は飲み物の制限がある
飲み物の場合、水であればマウスピースをしたまま飲んでも全く問題ありません。無色透明な飲み物でも、少量でも糖分や酸味のある飲み物は、むし歯の原因になりますので、マウスピースを外して飲み、飲んだ後はすぐに歯磨きをしましょう。
インビザラインが推奨される症例
- 非抜歯治療が適応で以下の条件を満たす症例
- 歯の凹凸(ガタガタ)が軽度である
- 歯の凹凸(ガタガタ)が軽度であり、歯列の拡大で咬合の改善が見込める
- 大きな歯の移動を伴わない
- 矯正治療終了後の後戻りの改善症例
- 抜歯症例であっても歯の移動量が少なく、かつ傾斜移動のみで改善が認められる症例
- 金属アレルギーを有する症例
奥歯のかみ合わせに大きな問題がない症例が適応となります。
反対咬合であっても骨格的に問題がない場合は、
インビザラインの適応となる場合があります。
レントゲン写真や模型分析をもとに、慎重に判断いたします。
インビザラインが推奨されない症例
- 抜歯症例
- 犬歯が遠心傾斜している
- 前歯部が大きく舌側傾斜している
- 歯の大きな移動を必要とする
- 歯の大きな回転、圧下、挺出を必要とする
- 患者の協力度が低い
- 乳歯列期、混合歯列期で顎骨の成長発育や歯の萌出の正確な予測が困難な症例
- 骨格性の不正を有する症例
さまざまな歯の動き方
傾斜移動
歯体移動
挺出
圧下
回転
歯根の動き
推奨されない症例
Case1
捻転(歯のねじれ)は、ワイヤーでなおした方が早く治る可能性があります。歯のねじれを治すのは、インビザラインでは不得意な動きとなります。
Case2
奥歯を手前に移動させるような動きもインビザラインでは不得意な動きとなり、ワイヤー矯正で治療した方が早く確実に治る可能性が高いです。
子どものインビザライン
インビザライン・ファーストのメリット
Ⅰ期治療の目的は、顎の発育をサポートすることで、これから生えてくる永久歯のためのスペースを作り、同時に歯並びを整えることです。
- 歯並びを整えることで、発育過程にある患者さんの笑顔を改善します。
- Ⅱ期治療がよりストレスなく行え、抜歯する可能性も低くなります。
Q&A
治療できる範囲は限られますか?
一般的な矯正装置と同様です
一般的な矯正装置と同様、治療の適用範囲に制限は設けておりません。但し、歯並びによっては対応できない可能性がございます。詳しくはお気軽にお訪ねください。
治療期間はどれくらいですか?
従来の矯正治療と変わりません
治療期間は、歯並びや年齢、口腔内の状況によって異なりますが、従来の矯正治療とほとんど変わりません。
通院頻度はどれくらいですか?
1ヶ月ごとに一度ご来院ください
通常1ヶ月ごとに一度の通院になりますが、状態に応じて通院期間が異なる場合がございます。
年齢に制限はありますか?
年齢による制限はありません
永久歯が完全に生えそろっていない患者様でも治療が可能です。詳しくはお気軽にお訪ねください。
治療費用はどのくらいかかりますか?
料金表をご確認ください
治療費用は、患者様のお口の状況に応じて必要な治療の種類や期間等をふまえて決定いたします。
詳しくは料金表ページにてご確認ください。
インビザラインは米アラインテクノロジー社の製品の商標です。
日本ではインビザラインとも呼ばれているマウスピースを用いた矯正は、インビザラインに限らず世界では大小60以上もの会社が販売しています。その中でもアラインテクノロジー社のインビザラインは世界最大シェアを誇っています。
日本ではこのインビザラインは厚生労働省に薬事承認された医療機器ではなく、雑品扱いとなっています。
日本で『医療機器としての矯正装置』と認められるものは、(1)薬事承認されている材料を使って、(2)「日本の国家試験をパスした歯科医師か歯科技工士が製作したものか、(3)既製品であればそのものが薬事承認されていなければなりません。
インビザラインは、材料そのものは薬事承認されており口の中に入れて問題のあるものではないので(1)はクリアしていますが、人の手で作られたものではないことと、個々の患者さんに合わせてオーダーメイドで作られる装置であるため既製品ではないことから(2)と(3)には該当しません。
以上の事情から、日本においてインビザラインで治療をする場合、歯科医師はこれらのことを患者さんに説明し、同意をいただく必要があります。当院ではインビザラインを使って矯正歯科治療を行う場合、すべての患者さんに以上のことを説明し、書面にて同意を得てから治療を行っています。