歯が生えてこない、本数が足りない 先天性欠如(先天性欠損)について

小児の10%以上が先天性欠如

永久歯の数は28本です。この28本の永久歯のうち、何本かが生えてこない状態を先天性欠如(せんてんせいけつじょ)または先天性欠損(せんてんせいけっそん)と呼びます。

そんな人いるのかな、と思うかもしれませんが、小児の10%の方に先天性欠如があるという調査結果が発表されています。

永久歯の先天性欠如者数は 1,568 名,発現頻度は 10.09% であり,男子が 9.13%,女子 が 10.98% であった。

ご自分やお子さまの永久歯の本数を数えた経験のある方は、あまりいらっしゃらないかと思います。
当院では最初に来院していただいたときにレントゲンを撮影し、その後に歯の状態を1本づつ記録しますので、先天性欠如がチェックできます。不安のある方もない方も、まずは受診をおすすめします。

先天性欠如の原因は?

先天性欠如の原因はさまざまなものが考えられていますが、はっきりわかっていません。先天性欠如は病気ではなく、発育の障害の1つで、防ぐ方法は見つかっていません。先天性欠如であると診断されてから、対策することになります。

乳歯があれば成人でも大丈夫?

永久歯が生えてこない先天性欠如では、乳歯が残っている状態と、乳歯も永久歯もない状態があります。成人でも乳歯が残っていれば本数は足りるので、なにもしなくていいのでしょうか。

乳歯はもともと永久歯までの「つなぎ」が役目で、永久歯ほど長もちする構造ではありません。成人になっても残っている乳歯は、やがて抜けてしまいます。乳歯の数は永久歯より少ない20本で、永久歯とは生える位置も違うため、乳歯と永久歯が両方生えている状態が長く続くことは好ましくありません。

このため、乳歯が残っている成人も対策が必要です。

入れ歯やインプラントをすればいい?

これまでの歯科治療では、先天性欠如には特に対策をせず、成人になってからむし歯などで歯がなくなった時と同じ治療をしてきました。具体的には入れ歯・ブリッジ・インプラントなどです。この方法は、歯のない状態を長期間放置するという大きな欠点があります。

入れ歯は外観や装着感の悪さ、ブリッジは健康な歯を削ること、インプラントは高額で継続的なメンテナンスが必要という本来の難点もあり、ベストな対策とはいえません。

永久歯は28本が揃い、上下がかみ合っていることで正常な状態を保てます。乳歯の後に永久歯が生えてくれば歯のない状態は短期間ですみます。アゴが成長過程でやわらかいお子さまの時期に先天性欠如を放置して「とりあえず、ようすをみましょう」で永久歯が生えそろってからの治療をすると、歯だけではなくアゴや顔全体に大きく影響します。

先天性欠如には矯正治療を

矯正治療では「歯の本数とアゴの骨を調和させる」ことができます。
現代人は食生活の変化などが影響するのか、アゴが小さい傾向があります。アゴの骨の成長が見こめない成人の矯正治療では、アゴにあわせて歯を抜くこともあります。つまり矯正治療を前提とすると、歯の本数が少ないことは必ずしもデメリットにはなりません。

アゴが成長過程でやわらかいお子さまの時期に矯正治療を始めると、最も効果があります。歯の本数にあわせてアゴの骨を正しく導き、永久歯の位置を整えることができます。歯の本数が大きく足りないときは、入れ歯・ブリッジ・インプラントなどを併用する可能性がありますが、その数を最小限にできます。

矯正治療は自由診療(自費診療)となりますため、安価な選択肢ではありません。また、お子さまの時期からはじめますと長期間の治療が必要です。しかし最終的にお子さまの歯の本数とお顔の調和がとれ、歯を削らず、美しい歯ならびのご自分の歯で過ごせる将来を考えますと、先天性欠如には矯正治療が最も適していると当院では考えております。